この病院の305号室に、林太郎さんの産みの母がいると言うことだった。

病室に到着すると、
「あの、どちら様でしょうか?」
と、誰かに声をかけられた。

視線を向けると、そこにいたのは1人の中年男だった。

手には花が入った花瓶を持っていたので、水換えをするために外に出ていたところで私たちに遭遇したみたいだ。

「姉の知りあいですか?」

そう聞いてきた彼に、
「姉?」

私たちは声をそろえて聞き返した。

「はい、この病室にいるのは僕の姉です」

彼は私たちに答えた。

どうやら、彼は林太郎さんの産みの母の身内みたいだ。

私たちは病室から離れたところにある待合室に行くと、彼にここへくるまでの経緯を話した。