初恋交響楽

「『葉月出版社』の週刊誌『春夏秋冬』の記者さんですか…？」

そこに書いてあったのは大手出版社名と有名な週刊誌の名前だった。

「はい、もし嘘だと思うならば上司もここに同席させますが」

「いえ、大丈夫です、信じました」

ものすごい念の入れようだな。

疑われたことや信じてもらえなかったことがあるのだろうか？

そう思いながら、わたしは野田さんの手から名刺を受け取った。

「実は『成田屋』には以前から横領疑惑が浮上していまして」
と、野田さんが話を切り出した。

「横領疑惑、ですか？」

「はい、３年前から専務の虎頭と副社長秘書の寺島がギャンブルで作った借金を片づけるために会社の金を盗んでいたそうで」

「そんな前から…」

わたしは唖然とすることしかできなかった。