初恋交響楽

「失礼します」

寺島さんはペコリと頭を下げると、また個室を後にしたのだった。

その後ろ姿を見送ると、
「僕も失礼してもよろしいでしょうか?」
と、野田さんが声をかけてきた。

「えっ…ああ、はい…」

わたしは返事をした。

正直なことを言うと、野田さんと2人で食事をする気はなかった。

あんなことを言われてしまった以上、野田さんと何を話せばいいのかわからなかった。

「失礼します」

野田さんはペコリと頭を下げると、個室を出たのだった。

その後ろ姿がなくなると、
「考えた方がいい、か…」
と、わたしは呟いた。

何で大国くんと離婚したいのか、改めて考えろ…って言うことだよね?

「離婚したいも何も…」

チクリと、胸が痛くなった。