初恋交響楽

「もう少し考えてから作戦に応じたほうがいいんじゃないかと、僕は思いますが…」

野田さんのその言葉に、自分の心が揺らいでいることに気づいた。

「き、気持ちは変わりません」

それがバレてしまいたくなかったので、わたしは言った。

「わたしは、夫と離婚をしたいと思っています。

そう思っているから、この作戦に返事をしたんです。

考える必要はありません」

そう返事をしたわたしだけど、野田さんの顔は変わらなかった。

そこへ寺島さんが戻ってきた。

「すみません、今すぐに会社へ戻ってもよろしいでしょうか?

詳しいことに関してはまた後日、連絡をしますので」

どこか慌てた様子の寺島さんに、
「はい、わかりました」

わたしは返事をした。