初恋交響楽

「大国くんの…ああ、なるほど」

一応ではあるが、お互いのアドレスを教えていたことを思い出した。

「結婚生活の方は順調ですか?」

そう聞いてきた寺島さんに、
「ええ、順調ですよ。

作戦も全て失敗に終わりました」

わたしはやれやれと息を吐きながら答えた。

「作戦?」

そう聞き返してきた寺島さんに、
「大国くんに嫌がらせをして離婚を言わせてもらうと言う」

わたしは言った。

「ああ、そうでしたね」

寺島さんは思い出したと言うように返事をした。

「彼の嫌いなものを作って食卓に並べたり、大切にしていたスーツを破ったり、熱いお湯やほうじ茶をかけたり、家に遅くに帰ったり、家事をしなかったり…と作戦を立ててやったんですけど、全部失敗に終わりました」

わたしはあからさまだと言わんばかりに息を吐いた。