「いい朝だなー! バンド日和!」

「なんじゃそら」



領がぐいっと空に向かって両手を伸ばす。呆れたように笑う怜のツッコミもお構いなしだ。



「綾乃、緊張してる?」

「う、うん……」

「ガッチガチだなー、もっと気楽でダイジョーブだって!」




朝早く、借りた小さなスタジオに集まって最終打ち合わせを済ませた。何度も歌った既存バンドのコピー曲と、領が作詞作曲したはるとうたたねオリジナル曲のふたつ。


───そう、ついに始めてのライブの日がやってきた。


歌うのは2曲、時間にしたら15分にも満たないけれど。




「綾乃、初ステージだもんなー」

「領は無邪気すぎだ」

「浩平がいつも冷静すぎるんだろー?!」

「ハイハイ、時間ねーからサッサと行くよ」




怜のひとことに「はーい」と領が返事をしてスタジオを出る。本番まであと数時間、まずは会場へと向かわなきゃ。


実は、昨日から緊張が解けない。毎日練習してるとはいえ、ひとりで人前で歌うのなんて人生で初めてのことだ。




「つーか、その前に衣装でしょーが。ウチが綾乃のことめっちゃかわいくすっから」



怜が誇らしげにそう言うと。



「それもそうじゃん! たのしみだなー」



と無邪気に領はわらう。上機嫌だ、きっとステージに立つのがすごく楽しみなんだろうなあ。