夏合宿が終わっても、みんなで集まって毎日数時間でも練習をした。もちろん予定が合わない日もあるので、そういう日はそれぞれ個人練習。

私も、お母さんが家にいない時間を狙って発声練習や滑舌をよくする舌の運動、音程をきれいにとるための音感トレーニング、ひとりでもできることを領に教わった。お風呂の中や階段付近は、自分の声が響いて歌っているのが気持ちいいってことも。

3人の伴奏と合わせる度に、自分の声量や技術力のなさに情けなくなるけれど、そんな私に3人は決して嫌な顔をしない。

音程を間違えても、歌詞を間違えても、タイミングやリズムがずれても、どれだけだって、何度だってやり直していちからちゃんと教えてくれるの。



『綾乃の声は本当に綺麗だし、何より領のギターの音色にいちばんマッチしてる』


浩平がこの間そう言ってくれたな。


『綾乃、自信持って歌えばいいんだよ。オーケストラで言えば、綾乃は指揮者なんだ。俺らはね、綾乃が気持ちよく歌えるように、どれだけだって合わせてやる。信用して』


領はそう笑ったな。



『ワタシのベースに合わせられんの、この2人だけだと思ってたケド。綾乃の歌声、合ってんのよ、うちらのバンドに必要』


怜はそうやって、私の頭を撫でてくれたな。


こんなふうに、自分を認めてくれる場所、今までなかった。そんなことに、毎日涙が出るくらいうれしくて、どうにかして、はるとうたたねの、必要な1人になりたいって、私思ってるんだよ。