「じゃー俺はいってくるー」



頭に音符マークを浮かべながら領がルンルンでお風呂場へ向う。いつでも上機嫌だけど、合宿中はいつも以上に元気で楽しそうだ。

昼間はひたすら個人練習、夕方に合わせをして、夕飯を食べたら自由時間がやってくる。4人でテレビを見たり、ゲームをしたりと様々で、修学旅行みたいだなあと思う。中学生の時の修学旅行は、確か気分が乗らなくて当日に休んでしまったけれど。


時間はあっという間に11時。


ジャンケンの結果、お風呂の順番は、1番目が怜、2番目が私、3番目が領、4番目が浩平になった。怜が『女子が先に決まってんだろーが』と男子2人を脅してたんだけどね。

怜は先にお風呂に入って、私がシャワーを浴びている間に寝る準備を済ませたみたい。女子部屋からはすーすーと小さな寝息が聞こえていた。

わたしは今髪を乾かし終わったところだっていうのに、やることが早いなあ。でも、朝から夕方までずっと練習続きだ、きっと相当疲れてるんだろう。私も喉がカラカラだ。しっかり保湿しなきゃ。



「ふう、」



領がお風呂に向かった後、台所の4人テーブルの1つに腰掛けて水を一杯。

そのまま頭を机にくっつける。ひんやりして気持ちいい。そういえば、今日はずっと1人になることがなかったな。

学校でも、家でも、ひとりでいるのは得意なのに。



「……なにしてんの」



ふと、上からした声に顔をあげる。

まだお風呂に入っていない浩平は、男子部屋にいると思っていたのだけれど。気配がないから気づかなかった。

そのまま何も言わず、目の前に座る。無口だなあ。



「お風呂入ったとこだから、暑くて……頭冷やしてたの」



机に頭をつけて頭を冷やしていたなんて、変なの、ちょっとつかれてるかな。