「好きな奴と、お似合いになれるようにしなきゃだね、おれも」



───"好きな奴″。


領の口から出たその言葉。

領、好きな人、いるんだ。

なんだか急に実感が沸いて、私は再び顔を伏せる。

なんだ。そっか。そりゃあ、そうだよね。

領だってひとりの男の子だ。だいたい、この歳になって人を好きになったこともない私の方がおかしい。この前怜に驚かれたのだって、そういうことだ。



「……誰?」

「え?」

「領の好きな人、誰?」



思い切って顔を上げた。

そこには、目をまん丸にした領がいる。



「……え?」

「だから、領の好きな人」



がくんっとでも効果音が入ったように領は肩を落として頭を抱えた。



「もー綾乃バカー?! もう、俺不憫すぎ……うあっー」

「な、意味わからない! なんで叫ぶの!」

「叫びたい気分なの! ア"ッー!」

「なにそれ……。人が質問してるのに!」



しばらくすると、叫んでいた領がピタッと止まった。顔を覆っていた手のひらの隙間から、チラリと顔をのぞかせる。

私はまた、領の視線につかまる。



「……キョーミある?」



ぐっと、息を飲み込んだ。