「あっちー! まじ最近暑くねーっ?!」

「そりゃ夏だからな。つーか夏休みまであと3日だし」

「どうせ休みもなく練習でしょ」

「え、そ、そうなの?」


わたしの言葉に3人がにやりと笑う。

いつの間にか、こんな風に3人の会話に混ざれるようになった私。まだちょっと不自然だけど、少しずつ、輪に入れている気がするんだ。



「綾乃には言ってなかったけどー、夏こそバンド! 夏といえばバンド! ってことでほぼ毎日集まります!」

「領の場合、春でも冬でも秋でもバンドだろー」

「うるっさいなー! 夏は特に燃えるの!」



窓の外では、セミがこれでもかという程鳴いている。教室の中は蒸し暑くて倒れそうだ。



「そうなんだ……」


中学に上がってから、夏休みというものは私にとって地獄も同然のようなものだった。学校も嫌いだけど、一日中家にいるというのは、想像以上に精神を使う。

毎日課題と夏休み明け授業の予習。自分の部屋から出る時間はご飯とお風呂とトイレだけ。たまに散歩に行ったりはするけれど。



「てか、今年はどこでやんの、夏練」



怜が、あちい、と言いながら長い髪をひとつにくくっている。

夏休み中は学校を貸してもらえないから、場所を移動しなくちゃならないらしい。

去年は浩平の家だった、と怜がわたしに耳打ちした。



「んー……どーする? 浩平は去年お世話になったからもう行けないし、綾乃ん家はぜったいむりでしょ? 怜の家もキビシーし…」

「だとすると」



怜の言葉に続いて、全員の視線が領に集まる。


「俺ん家しかないじゃん!」


いつもの笑顔で、領が立ち上がった。