「じゃあ、次は俺らの紹介」



 女の子に続いて、黒髪くんがそう言って立ち上がる。手にはドラムスティックらしきものを持って。




「俺は、高沢 浩平(タカザワ コウヘイ)。 ドラム担当兼、ふたりのお世話役」

「はあっ?! お世話役ってなんだよコーヘー!」

「アンタらウルサ。アタシは、赤川 怜(アカガワ レイ)。ベース担当ね。ヨロシク」

「俺は、高城 領!ギター兼、作詞作曲、たまにボーカルもやります! ってことで綾乃、これからヨロシクッ!」



 3人が、私の目の前に立って笑ってる。私を見て、笑ってる。

どうしてだろう。胸がぎゅって熱くて、言葉が出ない。だって、ひとが、私に向かって、ヨロシクって手を差し伸べてくれている。

 小さな部屋に4人。息をする音が聞こえる距離だ。私がここにいる。だって、3人の目に私がちゃんと写っているから。



「よろしく、お願いします……」



 人と関わること。
今まで避けて通ってきた道。

 こんなふうに、誰かと笑い合える日が来るなんて思わなかった。