「……キレイだね」
「でしょー?」
ああ、そっか。わたし、空の色まで忘れていたのかもしれない。こんなに青い空が、どこまでも続いているなんて知らなかった。
「空気が、おいしいね」
「うん」
「雲が、流れてるね」
「うん」
本当に当たり前のことを、ポツポツ呟いて。高城領はそんな私の言葉に、相槌をうって頷いてくれた。
「……私、全然知らなかった」
なんでかな、わかんないよ。
だけどね、ただ、空が空気が、この世界が。あまりにも広くて、きれいだったから。
「……私ね。
本当はすごい、できそこないなの」
隣で相槌を打つこの人に、本当のことを聞いてもらいたいって思ってしまったんだ。