「あの曲さ、」
くるっと、一瞬にして、後ろから抱きしめられている体制から、真正面で領と向き合う体制へと変えられる。ぱちくりと目を開くと、そこには少しだけ顔を赤くした彼がいて。
「……あの歌詞、おれに向けて?」
あの曲、と指す物が。私が夏休み最終日に徹夜で書き上げた曲を指すことは、容易に想像できる。
「……うん、そうだよ」
「はは、やっぱり」
「気づいてたの?」
「ううん、そうだといいなって、勝手に思ってただけ」
それは、恋を春に例えたバラード曲。きみのおかげで世界は色づきはじめる。それは、青でも、ピンクでも、オレンジでもない。
「……まあ、これの相手がおれじゃなかったら、相当焼いてたけどねー」
「また、そういうこという」
「ほんとの話、ごまかさないのー」
曲名、
───"偏にきみと白い春"
"White spring with you"───
きみと一緒に色づけていく。日常を輝かせていく。青春と言うより、白春、きっとそれがわたしたちには一番似合う。