走った。色とりどりに飾られた校舎内、いつもより人で溢れかえっている。そんな人ごみの中をかき分けて走る。

時々、「ねぇ、アレ、はるとうたたねのボーカルの子じゃない?!」なんて声が耳に入ったりしてきても、足を止めるわけにはいかなかった。


体育館から校門まで一番わかりやすくて近いルート。まだ学校の中にいるなら、この道のどこかにいるはず。


走って、探して、目をこらして、───見覚えのある背中を、見つけた。




「───お母さん!」




久しぶりに呼んだその単語。驚くように振り向いた顔。名前を呼んだわけじゃないのに。私の声がわかったんだ。



「っ……はぁ、っは、……話を、しよう?」



全力で走ってきたせいで息が切れる。数メートル手前で足を止めて、膝に手をつく。ぎゅっと目をつぶった。

何を言われたって構わない。私は、私のできることをする。自分の意思で、行動するんだ。



「……そこにいたら通行人の邪魔になるわよ、こっちへいらっしゃい」



お母さんは、そう言って私を手招いた。