◇
走った。色とりどりに飾られた校舎内、いつもより人で溢れかえっている。そんな人ごみの中をかき分けて走る。
時々、「ねぇ、アレ、はるとうたたねのボーカルの子じゃない?!」なんて声が耳に入ったりしてきても、足を止めるわけにはいかなかった。
体育館から校門まで一番わかりやすくて近いルート。まだ学校の中にいるなら、この道のどこかにいるはず。
走って、探して、目をこらして、───見覚えのある背中を、見つけた。
「───お母さん!」
久しぶりに呼んだその単語。驚くように振り向いた顔。名前を呼んだわけじゃないのに。私の声がわかったんだ。
「っ……はぁ、っは、……話を、しよう?」
全力で走ってきたせいで息が切れる。数メートル手前で足を止めて、膝に手をつく。ぎゅっと目をつぶった。
何を言われたって構わない。私は、私のできることをする。自分の意思で、行動するんだ。
「……そこにいたら通行人の邪魔になるわよ、こっちへいらっしゃい」
お母さんは、そう言って私を手招いた。
走った。色とりどりに飾られた校舎内、いつもより人で溢れかえっている。そんな人ごみの中をかき分けて走る。
時々、「ねぇ、アレ、はるとうたたねのボーカルの子じゃない?!」なんて声が耳に入ったりしてきても、足を止めるわけにはいかなかった。
体育館から校門まで一番わかりやすくて近いルート。まだ学校の中にいるなら、この道のどこかにいるはず。
走って、探して、目をこらして、───見覚えのある背中を、見つけた。
「───お母さん!」
久しぶりに呼んだその単語。驚くように振り向いた顔。名前を呼んだわけじゃないのに。私の声がわかったんだ。
「っ……はぁ、っは、……話を、しよう?」
全力で走ってきたせいで息が切れる。数メートル手前で足を止めて、膝に手をつく。ぎゅっと目をつぶった。
何を言われたって構わない。私は、私のできることをする。自分の意思で、行動するんだ。
「……そこにいたら通行人の邪魔になるわよ、こっちへいらっしゃい」
お母さんは、そう言って私を手招いた。