まだ歓声は鳴り止まないけれど、出演時間は決まっているので運営に舞台裏へと促され、戻る。アンコールの声と拍手はここまでまだ聞こえている。どうしよう、泣きそうだ。




「あー、ホント、サイッコー!」

「やっと終わったな、」



怜と浩平の言葉に、領が「まだ、」と呟く。私たちはそんな領を見る。



「綾乃、ケータイ見た?」

「え……」



領に言われてケータイを開く。そこには一件の新着メッセージ。




―――――――――――――――――
件名:綾乃へ
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
よかった
歌、こんなに上手くなったのね


―――――――――――――――――



手が震えた。差出人は、お母さんだ。



「領、なんで……」

「見えなかった? 観客席に綾乃とそっくりの人いるんだもん、おれはすぐわかったよ」

「ウソ……」



あんなに観客席を見渡したのに、お母さんの姿を見つけられなかった。やっぱり私はまだまだ領には敵わない。



「今走れば間に合うんじゃない?」

「でも、」

「言わない後悔より言って後悔!」

「……っ」

「綾乃が帰ってきたら、打ち上げな!!!」

「ありがとう、」




トン、とやさしく押された背中。怜と浩平もすべてを悟って、私をやさしい目で送り出してくれている。




「───頑張れ」




話をしなくちゃならない。今日という日、領が、はるとうたたねが用意してくれた奇跡のような日。



もう逃げない、向き合う姿勢が、私には足りてなかった。