◇
連れて行かれたのは音楽準備室。自前の大きな鏡にたくさんのメイク道具、髪を巻くコテにヘアオイル。怜の美意識の高さには毎回驚く。本番前はいつもこれだ。
鏡の前に座らされて髪を巻いてもらうと、自分が自分じゃないみたいに思えるんだ。
いつもはワンピースに着替えるけれど、今日は制服。校則違反だけれどスカートは限界まで短くして、胸元のボタンは2つあけた。リボンはゆるめに。これも怜のセッティング。
「本番まで、あと何時間?」
「ん、1時間半」
「え、ホントに?!」
「綾乃がもたもたしてっからー」
「う、ゴメン」
そんな、なんて思いながら、私の心臓はうるさい。最低でも30分前には本番裏に集まらなきゃいけない。その30分前には4人でチューニングを兼ねた最終確認だ。
歌詞、間違えずに歌える? 音程外さずに歌える? 周りの音、ちゃんと聞ける? 失敗しない? 大丈夫?
───"大丈夫″
どこかから、声がしたような気がした。
「今……声しなかった?」
「ん? してないけど?」
じゃあ、今の声は……きっと、私の心の声だ。
私の心の中が、今までの経験や練習が、大丈夫だ、って言ってるんだ。
ふう、とひとつ大きく息を吸い込む。
できる、やれる、大丈夫だ。
連れて行かれたのは音楽準備室。自前の大きな鏡にたくさんのメイク道具、髪を巻くコテにヘアオイル。怜の美意識の高さには毎回驚く。本番前はいつもこれだ。
鏡の前に座らされて髪を巻いてもらうと、自分が自分じゃないみたいに思えるんだ。
いつもはワンピースに着替えるけれど、今日は制服。校則違反だけれどスカートは限界まで短くして、胸元のボタンは2つあけた。リボンはゆるめに。これも怜のセッティング。
「本番まで、あと何時間?」
「ん、1時間半」
「え、ホントに?!」
「綾乃がもたもたしてっからー」
「う、ゴメン」
そんな、なんて思いながら、私の心臓はうるさい。最低でも30分前には本番裏に集まらなきゃいけない。その30分前には4人でチューニングを兼ねた最終確認だ。
歌詞、間違えずに歌える? 音程外さずに歌える? 周りの音、ちゃんと聞ける? 失敗しない? 大丈夫?
───"大丈夫″
どこかから、声がしたような気がした。
「今……声しなかった?」
「ん? してないけど?」
じゃあ、今の声は……きっと、私の心の声だ。
私の心の中が、今までの経験や練習が、大丈夫だ、って言ってるんだ。
ふう、とひとつ大きく息を吸い込む。
できる、やれる、大丈夫だ。