───パンパンッ


開始時刻と共に鳴ったピストルの音に続いて、どこからともなくあがる風船たちやカラフルに飾り付けられた校内。教室からは一斉にみんなが飛び出していく。


待ちに待った、文化祭当日。

本番までは時間があるので、私も領と一緒に廊下に出ると、派手に飾り付けられた校内に、食べ物を売り出すクラスからいいにおいが漂っていた。



「焼き鳥いかがですかー?!
「ここのお化け屋敷、めっちゃ怖いですよー!」
「映画研究会でーす!」
「美術部展示してるので見に来てくださいー!」



どこからも勧誘の声が聞こえてくる。私たちもした方がいいのかな?と領に尋ねると、だいじょーぶ、絶対満員になるから、と笑顔で返ってきた。


そういえば、私のクラスの出し物はたこ焼き屋さんだけど、領と私は一切手伝いナシになっている。本来ならシフト制で店員担当しなきゃいけないんだけどね。

人徳のある領が説得してくれたんだ。バンドの練習があるから、って。



「おい綾乃、メイクすんぞ」

「え、」



いきなりグイッと後ろから肩を引かれたと思うと、そこにはいつもより派手にメイクした怜が立っていた。



「怜!」

「領もみたいだろ? もっと可愛くなった綾乃」

「これ以上可愛くなったら困るけど、怜に任せるー」

「えええ……」

「んじゃいくぞ、ぜってーかわいくしてやるから」



強引に手を引かれて走り出す。特別な日の始まりだ。