「あの歌詞さ」
「うん?」
あの歌詞、つまりきっと私が初めて作詞した歌詞のことだろう。
「───領に向けて?」
「えっ」
びっくりして、思わず持っていた肉まんを落としそうになってしまった。反射的にぐっと力をいれたから、それはなんとか阻止できたんだけれど。
「あれ、完全に片思いの曲だろ。リアルだし、綾乃の気持ち出てる。いい歌詞だけどね」
「えっと……」
「領のこと、好きなんだろ?」
「……」
どうしよう。
素直に頷いていいんだろうか。
確かにあの歌詞を書いたとき、頭の中にはいつも領がいた。デートの日に気づいてしまったけれど、私はどうしようもなく、高城領という人間に惹かれてしまっているんだ。
「隠さなくていーって、悪いことなんかじゃないじゃん?」
「でも、」
はるとうたたねで私が歌を歌う理由は、"領が好きだから"じゃない。自分の意思で、3人と夢を見たいと思ってる。それを勘違いされたくなかった。
「わかってるよ、綾乃のこと、案外ウチ信用してんだからさ」
「怜……」
「綾乃は言いにくいかもしれないけど、同じオンナとして、頼ってくれよって話!……友だち、だろ?」
怜を見る。赤くなった頬を見て、少し照れているのがわかった。
友だち。今更な単語のような気もするけれど、言葉にするとその重みがしっかりと伝わってくる。女の子同士が当たり前にしているような恋の話。誰かにしたことなんてないから。
「うん……わたし、領が好き、だと思う、」