「ハイ、綾乃」

「わ、ありがとー!」



帰り道。この後バイトに行くというふたりと別れて、怜と一緒に肩を並べた。怜が『そろそろ肉まん売ってそうじゃね?』と言うのでコンビニに寄る途中、『奢るからちょっと付き合って』と公園のベンチに座らされたのだった。



「もう売ってるんだね、肉まん」

「おでんや肉まんが一年間の中でイチバン売れるのって、売り始めの秋らしーよ」

「え、そうなんだ、冬だと思ってた」

「新鮮な物にはみんな食いつくからね」



怜が隣に腰掛ける。渡された熱々の袋を開くと、湯気の上った白い肉まんがひょっこり顔を覗かせた。

確かに、いつもは見ない商品が店頭に並んでいるのを見ると、つい欲しくなってしまうことと似ているのかも。スタバの新作に並ぶ女の子たちと同じ原理だ。

そのままぱくりとかぶりつくと、柔らかい生地に中から肉汁がぎゅっとあふれ出て、思わず目を細めてしまう。



「美味しいー」

「な、なんでかこの季節に食べる肉まんもウメーんだよなー」



怜も片手で肉まんにかぶりつく。



「それで、何か話だった?」

「ん?」

「怜、何か話したそうにしてるな、って」

「あー……」



思い返してみれば、怜と二人きりになること自体結構珍しいことだ。大体私たちはいつも4人でいるから。