「で、なんの話?」

「けっこー噂になってんだよ」

「え、噂って、何の?」

「アンタと、領のコト」



私と領のこと?

思い当たる節がなさすぎて首を傾げると、また深いため息をつかれる。第一、基本的に私は優等生で良い子を貫いているんだから人の噂話に名前が出ることは殆どない。



「昨日デートしてたところ、同じガッコーのやつに見られてたんだって」

「あ、そうなんだ」

「そうなんじゃねーっつーの」



デート、とはいえ。歌詞を書くための「仮」デート。私は領への気持ちを自覚してしまったけれど、そこから何か進展があったわけではないし、第一夏休み前だってクラスで私と領はよく一緒に行動していたはず。

一緒にいるところを見られたなんて、今更焦ることでもないと思うんだけれど……。



「だーかーら! アンタたち手繋いでたらしージャン?! それで領のファンやら何やらが騒いでんの!」

「あ……」



そこまで言われてやっと気づいた。確かにそうだ、昨日、駅に着いた時からずっと手を繋いでいたんだった。



「そ、それって、付き合ってるって思われてるってこと?!」

「そりゃそーよ、厄介なことしてくれんジャン領のヤツ」

「で、でも領ってフレンドリーだし、誰にでもああいうことしてるんじゃ……」

「バカ! 領はああ見えて一途だし馬鹿みてえに硬派なんだよ! つまり、付き合ってる女子にしか手なんて繋がねーの」

「ええ……」




じゃあ昨日は、私が歌詞を書けるために、リアリティを出すために、手を繋いでくれたってこと? ……それとも?



「とにかく、変なやっかみ買うよーなことすんなよ、領は以外とガチファンが多いんだから」

「うん、気をつけた方がいいかもね」



怜と浩平の言葉に、何も言えず頷いた。