「で、綾乃はわかったの? デートとか恋とかいうやつを」

「う、うん……まあ、そこそこには」

「へえー、まあ確かに、この歌詞見る限りはケッコー成長してんじゃん?」

「うん、いいんじゃない」



夏休み明け、1日目。

ホームルームと課題チェック、それから新学期がはじまる簡易的な式を済ませて午前中のみの学校が終わった。久しぶりだからか、制服が堅苦しく感じる。

そのまま音楽準備室に移動すると、怜と浩平が先に待っていて開口一番に「で?歌詞かけたの?」と催促してきたのだった。

ちなみに人気者の領は、久しぶりに会ったクラスメイトたちに囲まれていて、しばらく抜け出せなさそうだった。



「昨日寝ないで書いたんだから」

「ふーん、いいじゃん」

「もう、誰のせいだと思ってるの!」

「まあまあ、怒んなって綾乃ー」



そう、実は昨日のデート、あの後すぐに怜から電話がかかってきて中断になったのだ。理由は怜が電話口で「課題がおわんねー」と泣きついてきたから。

そのままふたりで怜の家近くのファミレスに直行。領も終わっていない課題があったらしく、私は2人に教えたり手伝ったりしながら夜まで課題地獄に付き合った。


私が歌詞を書いたのはその後。深夜の2時までかけたんだから。



「つーか綾乃、大丈夫なん?」

「え?大丈夫って、何が?」

「知らないんだ」



浩平の小声にはてなマークを浮かべると、怜が盛大にため息をつく。「ホントにウチら以外に友達いねーのな」なんて悲しい一言付き。余計なお世話!