「え、」
思わず出た、間抜けな返事。
それを聞いて、浩平はこちらを向いて笑った。
「動揺しすぎ」
「ど、動揺なんてしてない! 私、誰かを好きになったこととかないし、」
「ふーん、」
珍しくくすくす笑ってる浩平には、なんだかすべて見透かされてるみたいで怖い。
でも本当に、恋とか、好きな人とか、そういうガールズトークに人生で一度も混ざれたことがないのだ。恋や愛とは無縁の人生を送ってきたと言っても過言ではない。
「気づいてないってこともあるかもね」
「おい、コーへー、それ以上綾乃のこといじめんな」
「うん、ごめん、かわいくて」
怜が私を守るように浩平をにらみつけると、目を細めながらそんなことを言ってのける。浩平ってもしかしたら一番よくわからない人種かも。何を考えてるのか本当に読めない。
前みたいな作り笑いじゃないから、それはそれで嬉しいんだけれど。
「こーへい、あんまからかうなー」
「からかってないんだけど」
「……」
領の言葉にもとげのある言い方だ。おかげで領も黙ってしまうし。
「まあ、そういうのは自然に気づくことだから、アンタは口出しすんな」
「はーい」
怜がそう言うと素直にまたドラムを叩き始める浩平。意味深なことばかり言うから意味がわからない。
ラブソングなんて、書けるのかな、私。