「あーもう、文字数合わない……」
間に合わない間に合わないと口ずさみながら、頭の中に出来上がっている言葉をひとつずつ繋げていくけれど、何故だかしっくりこない。
現代文の文章問題、得意分野なんだけどな。読み取ることと生み出すことは全く別のものらしい。世界中の作詞家や小説家にスタンディングオベーションしたいくらいだ。
しかも、任されているのははるとうたたねには珍しいバラードで、恋曲だと限定されている。
「世の中のアーティストって天才なのかも……」
「そりゃそーだろ、天才の集まりなんだよ」
怜が呆れた声でそんなことを言ってくる。世の中に流通している音楽たち。当たり前にしていたけれど、それってすごいことだ。
そんな中に飛び込んでいこうとしているあなたたちも充分天才だよ、とは言わないでおく。わたしも一応その一員なのだし。
「綾乃、相当悩んでるね」
「これなら英語の論文書いた方が100倍ラク……」
「それはそれですごいけど」
「ラブソングなんていちばん無縁なのに……」
半分涙目の私を見てを浩平わらった。領は「えー」って知らんふり。
「綾乃の好きな人を思い浮かべればいいんじゃないの?」
と、浩平が素っ気ない態度で私に言い放った。