「……返事、ちゃんとするから、ちょっと考えてもいいかな、」
「うん、もちろん、ごめんねいきなり」
しょぼん、と肩を落としたように口をつぐんだ領はもうすっかりいつもの領だ。
「ううん、私も考えてたから」
「そっか、」
「でもね、わたし、今ひとつだけ言えることは、ね」
「うん?」
「……領に出会えて良かった。あのとき声をかけてくれて、本当にありがとう」
世界がかわった、きみが手を引いてくれたから。
あの日から突然、私の世界は廻りだしたんだよ。
「うん、おれも、綾乃に出会えて良かったって、心から思ってるよ」
はるとうたたねで見せて貰ったこの夏の思い出は、きっと勉強だけしていたら絶対に経験できなかったことなんだ。
今までの私だったら、誰かの気持ちにふれあえること、こんな風に涙がでそうになること、うれしいの最大級を、知ることなんてきっとできなかったよ。
はるとうたたね に出会えて、本当に良かった。