うん、そうだね。

文化祭がゴールじゃない。それは私も思っていたことだ。できればずっとこのまま、3人とバンドを続けていきたい。もっと歌が上手くなりたい。ステージに何度だって立ちたい。みんなの夢、一緒にかなえたい。



───だけどそれは、また、家族の期待を壊すことになる。



何度も期待を裏切ってきた。今度こそは、今回こそは、そう言って何度も、本番で躓いて、上手くいかなくて、なんの期待もかけられなくなった。

いい成績をとることが当たり前、いい大学に行くのが当たり前、いい会社に入っていい人と出会って結婚して、そんな理想像、成功者の"あたりまえ"を形成されているこの国で、レールを外れて人と違う道を選ぶことは至極勇気がいることだ。


今だって、自分は出来損ないで、人より多くの努力をしなきゃ、親が思う"あたりまえ"のレールには乗れやしない。


何度も失敗したからこそ、1番の成績をキープして、いい大学に入りたい。今度こそ、お母さんに失望されたくない。───あの頃みたいに、笑って欲しい。


根本的にある自分の想い。気づかないふりをしていたけれど、きっとそう。


本当は私、ずっと、認められたかった。


ずっと、お母さんにまた笑って欲しいと思っていた。