場面転換のため舞台が暗くなる。それでも尚歓声の声は止まない。各バンドに制限時間があるからアンコールには応えられないけれど、再登場の声は裏まで聞こえるくらい、ずっと続いている。


泣きそうだ。ううん、涙、止まらないや。



「はあ、つっかれたーー!!」


楽屋に戻ると、一番に領がそう叫んでぐっと拳を上にあげる。見渡せば三人とも汗だくで、やりきった、という表情。澄んでいて、晴ればれとして、誰よりかっこいい。3人が、いちばんかっこいいよ。



「え、てか、綾乃泣いてんじゃん」

「え、」

「…初舞台だしね」



三人が私を取り囲む。よしよし、と怜が頭をなでてくれると、領も浩平も笑った。



「大成功、だな」



浩平がTシャツで汗をぬぐいながら言う。泣いている私の気持ちを、三人とも何も言わなくてもわかってくれたんだろう。



「うん、もちろん! 綾乃の初舞台、大成功!」



領の声にあわせて、浩平と領は宙で手を合わせる。


ねえ、すごいね。


世界って、こんなにも輝いてたんだ。

私は今まで、何も知らずに勉強だけで生きてきた。「1」の文字以外で自分を満足させられるものなんてないと思っていた。それ以外すべて価値なんてないものだって。


だけど、それだけじゃなかった。


順位とか、1番とか、そんなことどうでもよくなる世界がここにあった。




教えてくれたのは、ほかでもない、「はるとうたたね」───3人だ。