「今、陛下と全て話してきた――」


ふたりきりになったタイミングで、兄さんはすぐに切り出した。

私は相槌を打ちながら、サリーの用意してくれた紅茶をいただく。ほんのりレモンの香る、妊娠中の身体を気遣った美味しい紅茶だ。


昨夜、私が家から攫われたあと、心配した兄さんはそのまま皇城へとやってきてくれたようだ。それから公務を終えたルイナードから一件についての説明を受け、その足でここまで駆けつけてくれたと説明してくれた。

サリーは議会だと言っていたが、もしかしたら朝食にルイナードが現れなかったのは、兄さんと話していたためかもしれない。

そして、さらに私の方からも昨夜の出来事を伝えると、兄さんは相槌を繰り返したあと、驚くべき結論をだした。


「うん。陛下と仲良くね」


飲んでいた紅茶を、吹き出してしまうかと思った。


「ケホッ! ケホッ! ⋯⋯兄さん、私の話⋯⋯ちゃんと聞いていた?」


渡されたタオルを受け取って、口元に運び息を整える。また、彼の思考が正常に動いているのかを疑う。普通じゃない。


「聞いてたさ。アイリスが大いに戸惑い、陛下に対して怒りを感じたのは理解できた。――でもね、俺はこれを機に、陛下と話し合ういいチャンスなんじゃないかと思っている」


何をいってるの―――? 自然と眉間に皺が寄る。


「――もしかして、兄さん――」


疑いの目を向けた瞬間、察した兄さんは「まてまて」と慌てた様子を見せる。