それからすぐに食堂へ向かい、食欲の無い胃へ無理やり食べものを押し込めた。幸いなことに、朝の議会があるらしくルイナードの姿はない。

私はあからさまにホッと胸を撫で下ろし、苦笑気味のサリーに気づかず食事に取り掛かる。

そして、食事を終えてサリーたちと共に部屋に戻ると、会いたかったその顔が再会を待ちわびていた。


「アイリス⋯⋯!」

「――兄さん!」


軍服に大剣を腰に備えている兄さんは、隣国のネスカへ遠征する前だと言う。私の顔を見に来てくれたようだ。

ヴァルフィエでは各国々に騎士団や貴族を配置させ、円滑な国づくりを行うために情勢交換がなされるシステムである。――と前に兄さんが説明してくれた。きっとその関係で向かうのだろう。


戻った足でそのまま、部屋内にあるテーブルを挟んで兄さんと向かい合う。

すると、カルム団長はふらりと部屋を出てゆき、お茶出しを終えたサリーも、気を利かしたのか、すぐに立ち去る。