父の生前、ロルシエ家には近侍と侍女が合わせて3名いた。共に城に移り住み、私が城を出るその日まで側で使えてくれていたのがサリーだ。

6つ上の彼女は姉のような存在であり、口達者な私に物事の良し悪しを教えてくれた、大切な人。


「こんなにお美しくなられているだなんてっ」

「サリーっ! またあえて嬉しいわ⋯⋯」


再会を喜び合っているうちに、私の目にもじわりと涙がにじむ。


「私と兄さんが城を出てから、みんなどうしているのだろうと胸を痛めてたの。⋯⋯私、本当になにも言わず、出てきちゃったから」

「ご安心ください、アイリスさま。ジャドレさまがお亡くなりになられて、アイリスさまとレイニーさまが去ったあと⋯⋯ルイナード陛下が城に置いて下さったのです」

「⋯⋯ルイナードが⋯⋯?」


驚きのあまり目を見張った。

彼女の話によると、私たちがここを出たあと、ロルシエ家の使用人は、みんな城に置いてもらえることになったらしい。


「とても暖かくて迎えてくださいました。なので、どうかお心を傷めないでくださいませ。私たちは、露頭に迷うこともなく、変わらずここに仕わせていただいたのです」


とても喜ばしいことだけれど、彼の行動に疑問しか湧いてこない。

なんでそんなことをしたの⋯⋯?

思わずくらりとした。