だけど――― 「上書きしてくれるなら⋯⋯今夜はあなたと過ごしたい」 率直な思いだった。 できるなら忘れさせて。 私の大切なものを奪ったくせに、ずっとずっと心に居座るあの男を。 お願いだから、早く忘れさせて――。 あなたとなら忘れられる気がする。 甘い誘惑に流されるがまま、上質なコートを引き寄せ、伸び上がるように彼の唇にキスをした。 もう止められない。 私はその夜―― 一夜限りの恋に落ちたのだった――。