「あら、でも、このあと軍事会議なんじゃ?」
「あぁ、“橋”が完成したから。その警備の詳細を決めるのにな」
ガサついた指先が、私の長い髪を撫で付けて、前髪を避けると流れるようにそこにキス落とす。
何年たっても、胸の奥がキュンといたくなる。
淡い小花柄のドレスを、再び訪れた春季の風が揺らし、離れた場所からは、ルーシーの楽しそうな声が聞こえる。
「――5年もかかったのね。これで、ヴァルフィエとヘリオンスも行き来しやすくなるかしら」
「あぁ、でも彼らの協力が無かったら、こんなに早く終わることはなかった」
私たちは手をつないで庭園を歩みながら、ふたりでこれまでの記憶を振り返る。
ルイナードが馬車の事故に巻き込まれて以来、これまで『反皇帝組織』はピタリと動きを潜めてきた。
理由は未だに、語られることはない。けれど、私は⋯⋯身を挺して人を守れるルイナードの姿に、心を打たれたのではないか、と勝手に解釈している。
そして、二年前に転機が訪れた。
遅れている橋梁工事さなかに、組織員たちが現れ『手伝わせて欲しい』とやってきたそうだ。
というのも、五年前の占拠の件で。職人たちを人質にしたにも関わらず、組織への処罰はなかった件が、背景にあるのではないか思う。
被害を被った職人たちは、口を揃えていったらしい。
『自分たちは何ひとつ傷つけられていないからいい。
ただ――帝国が、一つになることを、祈る』
民は、ルイナードの思いをしっかりと受け止めている。
私たちだけではない、みんなの願いは、ひとつなんだ。



