「やっと、この日が来たな⋯⋯。俺は、ふたりをずっと見てきたから、すごくもどかしかった」
「兄さん⋯⋯」
「マーシーとくっつけちゃおうか、なんて考えたこともあったけど⋯⋯アイリスが誰を好きなのかは一目瞭然だったし、俺も幸せになってもらわないと、安心してガールフレンド見つけられないしさ」
軽快な口調と共に、重みのあるティアラが、緩やかに編み込まれた頭のてっぺんに、そっと添えられた。
視界が緩みそうになるのをグッと堪えていると、ヴェールが下ろされる。
兄さんの手も少しだけ震えている。
「ガールフレンドなんて、見つけようともしてなかったくせに⋯⋯」
「今は、仕事が恋人だからなぁ」
「カッコつけちゃって」
そう言って小さく笑いあったあと、ドレスの上で組んでいた手を、スっと取られた。
「⋯⋯さぁ、行こう。陛下が、待ってる」
「⋯⋯大好きよ。兄さん。今まで、本当にありがとう」
かたく抱擁を交わしたあと、私たちはそっと腕を組んで開かれたホールの扉をくぐった。
手には小さな花束――アンナさんとトムさんからのお祝いのブーケをもって。
そして、壮大に着飾る人の海を。羨望の眼差しを受けながら、竦みそうになる足を奮い立たせて、兄さんと共に前に進む。



