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「アイリスさま、そろそろ体に障ります。宿へ戻りましょうか」
入院してから四日が経過。
近くの宿で体を休め、医院を往復する日々を送っていた。翌日から後を追うようにやってきてくれたサリーと兄さんが、ずっと私に付き添ってくれている。
サリーの声に顔をあげると、窓の外はもうオレンジ色だった。
あれから、ルイナードは目を覚まさず、未だに小さなベッドで眠ったままだ。四六時中そばについていたい気持ちはあるが、それは身重ということもあってできるわけもなく。こうして声がかかると、泣く泣く立ち上がるしかない。控室では兄さんも待っている。
心で自分を強くする呪文を唱える。
ルイナードなら、大丈夫。絶対に目を覚ます。私を置いて行ったりしない。
奮い立たせて、いつものように、彼の頬にキスを落とし、そっとその場を立ち去ろうとした。
そこで。コンコン、とノックが鳴り、マーシーが顔を出す。
「アイリス、まだいたんだね。もう外は暗くなってきたから、帰ったほうがいい」
夜は、マーシーかカルム団長のどちらかが、ルイナードに付き添うことになっている。悲壮の顔をしたカルム団長に変わり、今日はマーシーのようだ。



