マーシーは、昔から私に対して『幼馴染み』以上の気持ちを抱いて接してくる。
理由はなぜだかわからない。けれども、いつも褒め言葉の次に飛んでくるのは、こうした口説き文句。
純粋でストレートな気持ちは、目眩がするほど魅力的だけれど、彼は私にとって優しい『兄』でしかない。
だから兄さんには『ひとりでいく』とあれから何度も伝えたのに――
『だめだ。今の時期は夜が早い。城までの距離を歩くなんて、嫁入り前なのに襲われたら大変だ! 一応、アイリスだって女のコなんだから。今回はマーシーに甘えてくれ』
家から城までの距離は、歩いていて三十分といったところ。いつも花屋までの距離を同様に歩いてる私からすればさほどではない。



