「⋯⋯また、怪我でもしたら」

「大丈夫だ。もうそんなことはない」

「⋯⋯ようやく傷だって、癒えて来たばかりなのに」

「心配いらない。すぐに戻る。俺のいない間は、この城をお前に預ける。帰還したとき、お前に俺の全てを捧げてやる」


全て――? それって、もしかして―――⋯⋯


しかし、疑問を口にする前に、両頬を掴まれて噛みつくように唇が合わせられた。


それは、さっきの優しいキスとは違う。奪うような、喰らい尽くすような、本能的なキスだった。

一気に体から力が抜け落ち、思考がアイスのようにトロトロにとろけていくのがわかる。

何も考えられない。欲望のままに身体は反応する。

腰に回った腕が私の体を支えて、さらに奥深く貪るように口づけ。その背中に両腕を回し、私も自らを押し付けるように応戦する。

互いの上昇していく体温をもどかしく思いながらも、その熱い体を掻き抱いた。


ルイナードを感じたい⋯⋯。


やがて、ふたりの身体の奥深くに潜む、ジリジリとくすぶっていた欲望が顔を出した頃――彼は掠れた声で切願する。


「アイリス⋯⋯抱かせて」


返事をする前に再び唇は封じ込められてしまい、私はその激しい熱情に迷うことなく溺れていく。