右往左往したのち姿見の前にやってきた私は、ぼんやりと自分を眺める。
華やかな衣装の上にあるのは、とても不安そうな顔。
少しでも気分を上げるために、長い髪は珍しくひとつに編み込んでみた。
人形のようだと言われるぱちくりとした目と、あまりのトラブルのない色白の肌は、さほど化粧を施さず薄いリップ塗るだけにして。線の細いと言われる身体は、兄さんが用意してくれた母の形見のドレスを身につけた。
目が冴えるほど鮮やかなクラッシックブルーの軽装ドレスだ。胸元には鬱陶しいくらいのフリルに、裾部には銀糸のバラの刺繍が刻まれて。腰回りを包むように黒革のコルセットがウエストを押さえつける。
物置にあったから、ホコリっぽかったけれど。ドレスにはシミ一つ見当たらず何よりだ。
うちの物置には、ところどころにこうした財産が残っている。
それは生前のお父さまが一代限りの貴族に叙されていたからだ。
ヴァルフィエでは功績を讃えられ庶民が、爵位を得ることは、割と多く見受けられる。
しかし、“世襲”ではないため、私たちに引き継がれることはなかった。
けれども、こうして身分を失った今でも、一流品が残っている我が家の物置には感謝したい。



