私は彼の視線を受けながら、刃を鞘に収めて、遠くに放り投げた。
「――放棄するわ」
カラン、と景気の良い音が響き渡る。
最初からそのつもりで、服の中に忍ばせてきた。手にするのは書庫で彼に向けた以来だ。
「アイリス⋯⋯」
「同時に私はこの城にいる理由がなくなる。婚姻を結ぶ理由も、あなたといる理由もなくなるわ」
瞬時に、彼の表情が固くなる。
「ねぇ、ルイナード。私、どうしたら⋯⋯いいかしら?」
言葉にしていると悲しくなって、じわじわと目の奥が熱くなってくる。
こんな試すようなら言い方、ズルいのはわかっている。
“出ていけ”って言われるかもしれない。
けれども⋯⋯
『俺の想いは⋯⋯昔から何ひとつ変わっていないんだ―――』
この言葉を信じてみての、最後の悪あがきだ。
私は、中途半端な気持ちで“あの日”触れているわけではないから。
祈るような気持ちで見つめていると、
ほどなくして、ぐっと唇を、噛み締めたルイナードは
「ふざけるな。やっと手に入れられると思ったのに、逃がすわけないだろ⋯⋯」
体を起こした彼は、縋り付くように私を抱き寄せた。まるで子供が親を求めるような必死さで。
狂おうしいほどの、愛しさが募る。
バランスを崩してそのまま体重を預けると、大切だと言わんばかり、膝の上でギュッと抱きしめてくれる。



