しかし――。
『陛下は、きちんと公務の方を最小限にしていらっしゃるのですか? 体調が悪いのでは?』
『それはありません。体調はすこぶる良さそうなのですが――』
『これは、大事件ですよ、クロードさま⋯⋯』
事情を知らない二人からすれば大事件。日に日に声が大きくなっていく会話は、すでに密談ではなくなっている。当事者よりも、気に病んで仕方ないようだ。
止めに入ってくれそうなカルム団長や兄さんは、帝国内が安定していないという理由から、帰還後からは元の騎士団へと戻ってしまったし。
私は観念したようにそっと息を吐いて
『⋯⋯ふたりとも。ちゃんと話すから落ち着いて』
あまりのいたたまれなさに、腰を上げるしかなかったのだ。
✳✳✳
「しかし――ルイナード陛下はなぜ、お話し合いを避けるのでしょうか」
その日の夜。壮大な浴場に、不満げなサリーの疑問が湿った空気にふれる。
私は、専用の寝湯台にタオルを巻いて寝そべり、週に一度のお楽しみである、長い髪にオイルを塗られていく過程を、存分に楽しんでいた。
しっとりと薔薇油をまとったサリーの細い指先が、頭上から丁寧に髪を掻き分けて毛先まで滑り落ちる。
とても気持ちいい上に、浴場内はうっとりするほどの華やかな薔薇の香り。
でも。なんだか、今日は念入りな気がする。



