そう思った瞬間、咄嗟に身体を起こしていた。
「⋯⋯兄さん」
唐突に呼び止めると、部屋を出ようとしていた兄さんは振り向いて「なんだ」と首を傾げる。
「言っておくけど⋯⋯今回行くのは特別よ。この先も、私が――ルイナードを信じることはないわ」
提言した途端に息を呑むのが伝わってきた。
その名前を口にしたことに驚いたのか、それともそんなことを言われると想像していなかったのか。
真意はちっとも読めないけれど
「⋯⋯舞踏会には母さんの形見を着ていけ。当日はマーシーに送ってってもらえるように頼んでおくから。⋯⋯おやすみ」
曖昧な笑顔を残した兄さんは、そのまま部屋へと戻っていく。
同調はしない。かと言って否定もしない。いつものことなのに、なんだか今までで一番遠く感じた。
あの日、ルイナードから底冷えのする黄金色を向けられたのは――私だけ。
私にしかわからないの⋯⋯?
数日後に満月を予感させるお月様が、私を静観している。
「お父さま、私はなにかまちがえているの⋯⋯?」
夜空に輝くソレは何も答えてくれない。
まちがえているなんて思ったことはない。自分が見たもの、感じたものが全てだと思ってきたから。
再び布団に潜り込んだ私は、湧き上がる荒波を打ち消すかのようにぎゅっと目を瞑った。



