でも、不思議と妙に胸のうちにストンとハマって。
心がじわじわと潤いに満たされた。
その感覚に戸惑いながら、柔らかなワンピースの胸元をキュッと掴んだとき、兄さんの背後にぼんやりとお父さまの影が見えたような気がした。
「えっ⋯⋯」
「ほら、サリーが待ってるからいくぞー!」
「え、ちょっと!」
兄さんは、必死に宙を指差す私の様子にも気づかず、ひょいとバケツを手にすると、軽快に庭園へ続く裏道を歩いていってしまった。
⋯⋯人の話を聞かないんだから。
私は足が地面に張り付いて、しばらくその場を動くことができなかった。
お父さまが見えたこともそうだけれど、兄さんの言葉が、まだ耳に残っていたから。
そうか。突き詰めてみればいいんだ。
『陛下の言葉すべてが真実とも限らなければ、嘘とも限らない』
これまで十年間、それだけが真実だと思って生きてきた。
でも、城に来てから、矛盾だらけのルイナードから目が反らせない。
ねぇ、ルイナード。
あなたは本当に⋯⋯お父さまを殺したと言うの?
真実、嘘か。納得するまで、体当たりしてみればいいのよ。
もしかしたら、彼は、その胸の内に何かを隠しているのかもしれない。



