しかし、翌朝――。
『母さま⋯⋯おねがいします。今日は外に遊びに――』
『ルイナード⋯⋯だめよ。まだ、少しだけ熱があるわ。昼間無理をすれば昨夜みたいに、熱が上がってしまうかもしれないわ』
願いは虚しく熱は下がらなかった。
病弱な母さまは、体調の変化に敏感だ。例え回復傾向にあろうとも、油断はしない。
『でも⋯⋯』
『――さぁ、母さんと父さんはジャドレと公務に出かけてくるわ。あなたはゆっくりお休みなさい』
そんな母さまも、俺が10歳のときに亡くなった。今思えば、幼い頃の病弱な体質は、母さま譲りだったのかもしれない。
ベッドに取り残された俺は、心が罪悪感に押し潰れそうに痛んでいた。
アイリス⋯⋯。
マーシーと仲良くしていたからって、嫉妬して、悪態ついて、部屋に戻って。それでもって、ひとりきりにして。何日もあんなに寂しそうな顔をさせている。
俺は⋯⋯何をしているんだ。
ジャドレさんが公務に出掛けて、レイニーが訓練所に遊びに行ったら。アイリスは、またひとりになってしまう。
今日こそ⋯⋯。泣いてしまったら、どうしよう。
行ってあげなければ。守ってあげなければ。
そう思うのに⋯⋯鉛のように動かないこの身体が、悔しい。
目を閉じて、ひたすら彼女の笑顔を願った。



