『あぁ――いたいた! アイリス!』
しかし、そんな楽しい俺の時間を邪魔する男が、月に一度やってくるようになった。
『あ、マーシー! 今日はお城にくる日なのね。いつも会いに来てくれてうれしーわ』
チョコレート色のくせ毛と、大きな瞳に太陽のような笑顔。いとも簡単に彼女と笑顔を掻っ攫っていく、マーシー=ドレイク。
もうひと月経ったのか。
こいつはアイリスのことが好きだから気に食わない。たぶん、アイリスも⋯⋯こいつのことが大好きなんだ、とその頃は不貞腐れていた。
『皇太子さま、ご機嫌よう。今日もアイリスとお過ごしでしたか』
そして、こいつもたぶん俺のことが気に食わない、と躍起になっていた。『あなたとはライバル』ですねと。アイリスがいないときに言われたからだ。
『――――』
『ルイナード、ちゃんとごあいさつくらいはしないとだめよ?』
『はは、アイリス、大丈夫だよ』
ふんっ。これ以上見ていられるか。
『体調が優れない。部屋に戻る』
『えぇー! ルイナード!』
背後から呼び止めるアイリスの声を聞きながら、足早に部屋に戻った。
わかってる。完全なる嫉妬だ。アイリスが悲しむのがわかってるのに、俺はこんなふうに感情を抑えられないことが度々あった。
しかし。困ったことに。
その夜から、俺は本当に体調をくずしてしまったのだった。



