「なにしてるのよ⋯⋯」
引っ込めようとするその手を引き止めて、むりやり正面から視線を合わせた。
オレンジ色のランプを取り込み色素の薄い瞳が儚げに揺れる。
「――ねぇ⋯なんで、花なんて私に届けるの? もしかして本気で口説こうとしているの?」
「⋯⋯⋯⋯」
「これはただの⋯⋯取り引きでしょ?」
「⋯⋯⋯⋯」
本当は怖いよ。聞くのが怖い。けれども、知りたい。私は、彼にとって憎い存在では無かったの?
「教えてよ⋯⋯! ルイナード⋯⋯」
名前を叫んだ、その瞬間。
掻き抱くように、背中に逞しい腕が巻き付いた。
胸にぶつけられるような。身体ごと持っていかれるような、とても乱暴な抱擁。
なのに、彼の一番繊細で脆い心の奥深くに、はじめて触れたような気がした。
「――黙れ」
視界は白シャツ一色になって、石鹸のような彼の優しい香りに包まれる。薄いシャツ越しに感じる莫大な鼓動。彼のものか、それとも私のものか。
「―――お前はなんで来た。カッコ悪いだろう⋯⋯」
彼のものとは思えないほど自信がなさげ小さくて、耳を澄ましていなければ聞こえない自信のない声が私の鼓膜をくすぐる。
カッコ⋯⋯悪い?
弱々しい声色に誘われて顔を上げると、ランプの光に揺れる、悔しげな表情を浮かべたルイナードがいる。
緩やかな夜風に遊ばれてのネグリジェが揺れる。彼のまとうシャツが、パタパタと音を立てて。
そして、薄情そうな唇が言葉を紡ごうとした瞬間、地面でぼんやり燃えていたランプの炎が、フッと消える。
「俺の想いは⋯⋯昔から何ひとつ変わっていないんだ―――」



