マーシーから話を聞くに、ここのところサザンメリーに私の姿が無いことが気になっていたようで、今朝、仕事で城を訪れた際、訓練中の兄さんを捕まえて問い詰めたようだ。そして、話を終えたその足で、カルム団長にひたすら頭を下げて、ようやくここまで連れてきてもらったとのこと。
会話を重ねるうちに、察したサリーはカルム団長を引き連れて退室してくれた。
「ねぇ、アイリスはそれでいいの? 子供ができたからとはいえ、相手はルイナードだよ? この十年ずっと彼の影に苦しんでいたじゃないか」
「マーシー⋯⋯」
正直、マーシーにはどうやって真実を伝えるべきかと思い悩んでいた。これまで彼の好意に応えることはなかったけれども。お父さまが亡くなって以降、ルイナードへの憎しみで苦しんでいた私を、ずっとずっと隣で支え励ましてくれたのはマーシーだ。
彼からのまっすぐで一途な気持ちをぶつけられている以上、非難されても仕方ないと覚悟していたのに。
彼はどこまでもまっすぐで、私の心は罪悪感にも似た気持ちに苛まれてしまう。
「ここにいてアイリスが幸せになれるとは思わない。亡きロルシエ郷のことを思い返して、心を傷めて⋯⋯。何より彼を殺したと断言したルイナードの元にいるんだ。君が壊れないか心配だ」
「⋯⋯心配はありがたいけど、でも、私はここでやっていくと決めたの。いくら不本意だとしても、決めたことを途中で投げ出すようなことはしたくないわ」



