『おそらく、望まないのは、“皇帝のいるヴァルフィエとの関わり”だろう。ヴァルフィエとネスカとの間にはすでに大きな橋があるからな。要は“俺”との関わりを避けるためにデモを起こしているんだろう』
『――――』
根本的な原因は、皇帝とヘリオンス国との根深い過去にある。
その昔――我が一族グランティエ家が革命を起こす前のヴァルフィエ帝国は、暴虐非道な皇帝一族の者にあった。
当時、人の命を物とも思わぬ政策が続く中、一番虐げられていた国こそが“ヘリオンス国”だった。
そんな辛い世の中に終止符を打ったのが、初代グランティエ皇帝なのだが。帝国中が祝福する中、ヘリオンス国の一部が声を上げた。
『皇帝制度への反発』だ。
しかし、掲げていたのはヘリオンス内のごく一部の民。そのため、反発は届くことなく、初代皇帝の人望と統率力が後押しとなり、続投となった。
そして、これまで数百年の年月、未だその子孫である彼らと、不安定な関係を保ったまま現状に至る。
現在では、そんな小規模な内乱を起こすようになった彼らを『反皇帝組織』とみな呼んでいる。
『十年前のような事態にならないといいのですが⋯⋯』
カルムも同じことを考えていたようで、俺は静かに頷く。ちらりと出てきそうになった“彼女”の影を無理矢理押し留めた。



