総勢千名を十グループにわけて成り立つ皇帝騎士団。
団長のカルムと、副団長のレイニー。そしてグループごとにリーダーを配置し、主要メンバーにて任務の配置を任せている。
故に、カルムの“相談”はだいたいがいいものではない。
その内容は案の定――いやそれ以上によくないものだった。
『――なに? ネスカとヘリオンスの国境でデモだと?』
庭園を踏みしめていた足を止めると、報告を重ねていたカルムは真剣な表情で頷く。
『はい。在中の騎士団からの情報によると、“ヘリオンスは、ヴァルフィエと国交の深いネスカとの交通の便は望まない”――とのことです』
『そうきたか』
不穏な空気にギリッと歯を食いしばる。
ヴァルフィエ帝国とは、ここヴァルフィエ王国を主体としたいくつかの近隣諸国との総称を言う。そして、その帝国内にあるネスカ国とヘリオンス国との間にある大きな湖に、現在国土をつなぐ“橋”の建設を予定しているのだが――どうやらそれに対する反発で、ヘリオンス国民の一部がデモを起こしているようだ。
とはいえ、その2国の折り合いが悪いがわけではない。
ヴァルフィエ王国の隣に位置するネスカ国は、山間にあるとても不便な地形にある小さな国だ。その事情を知るヘリオンス国の方も、協力的に水産物を主とした取り引きを行い、二国間の関係性はとてもいいとされているのだが――



