~陽太side~
太陽が輝いていた。今日の気温は昨日に引き続き30℃超えらしい。
僕を照りつけてくる太陽に少しイライラしながらも学校への道の上り坂を上る。
僕には僕だけの登下校の道がある。それは周りの人には内緒だ。
というか、言うような友達すら僕にはいない。みんなから悲しい人だと思われる。そう思われるのには慣れてきた。むしろ、1人の方が居心地がいい。誰かに気を遣うことがないし、自分のやりたいことを効率よく、たくさん行える。
今日は学校を休みたい気分だ。でも母さんに何か言われるのが嫌だから、学校へは行く。
今日1日だけちょっとくらい学校に遅れてもいいだろうと思い、僕は、道の途中にある森の中へと入っていった。
5分くらい森の中を歩くと、遠くに海が見えてきた。ここも僕だけが知っている場所だ。
この場所は、青い海がとても綺麗に見える。リラックスしたい時によくここに来る。
座って遠くの海をずっと眺める。空には雲も流れている。何気に僕はこの場所がお気に入りなんだなと思う。
ぼーっと景色を眺めていると、後ろからガサガサっと音がした。
熊だったらどうしよう、と思った。でも草の中から出てきたのは熊ではなく、女の子だった。
「おー!いいとこ、みいっけ!ってあれ?なんだ、先客がいたのかぁ」
と彼女は言った。
「君は誰?ここ、どうやって来たの?」
僕が聞くと、彼女は答えた。
「私の名前は夜舞彩月(よまいさつき)。なんか抜け道あるなぁと思って気になったから来た。君は?なんて名前?」
「僕は朝丘陽太(あさおかようた)。」
彼女は僕の名前に対して「いい名前だね」と言った。その時に気づいた。彼女が僕と同じ高校の制服を着ていることに。
彼女もそれに気づいたらしく、僕に「一緒の高校なの?」と聞いた。それは僕が知りたい。
「らしいね。」
と僕が口にすると、彼女の目はきらきらと輝いた。
「じゃあ、学校に連れてってよ。」
断る理由がなかったので僕は彼女を学校へと案内した。


学校に着くと彼女が「職員室はどこ?」と言うので、僕は彼女を職員室に連れていった。
職員室に行くと彼女は隣のクラス、2年2組の担任の矢田先生と話し始めた。
なぜ、彼女は学校の場所が分からないのだろう?
さっきから疑問に思っていたことが、彼女と矢田先生の会話の内容を聞いてようやく分かった。
どうやら彼女は転校生みたいだ。
僕はその場を後にして教室へと向かった。僕が教室に入ったと同時に、朝読書開始のチャイムがなった。間に合ったらしい。
準備をしてからすぐに、読書を開始した。


朝読書の時間が終わり、朝のホームルームも終わった。
すると、斜め前の席の男子がこっちを振り返って僕に言った。
「朝丘!お前隣のクラスに転校生来たの知ってるか?!」
この男子は鳴瀬碧生(なるせあおい)。しょっちゅう僕に話しかけてくる、フレンドリーな性格だ。だから、男女共に人気のあるクラスの人気者である。
「…うん」
僕はあまり関わりたくなくて、若干下を向いて答えた。
「可愛いんだってな!2組見に行く?」
「…いい」
「えっ〜なんでだよ〜!」
そんな会話をしていると、鳴瀬の席に男子が集まって来た。僕はあまりうるさいのは好きじゃないから、その場からそそくさと足早に去った。
教室から去り、どこに行こうかと悩んだが
(今日は天気が良いから屋上に行こ)
と、僕は屋上に行くことにした。


屋上に着き、扉を開けると、誰か女子が1人居た。
(あれって・・・夜舞彩月?)
僕は彼女を無視してベンチに座ろうとした。するとフェンスを握って外の景色を見ていた彼女がこちらを向いた。
「あっ!朝丘じゃん!」
すると、彼女は僕の方にやって来た。
僕の前で止まるとニコニコと笑った。何がそんなに面白いんだろうか。
「なんでここに居るの?」
(ここで何してたの?の方がよかったかな?まぁいいか)
と思いながらも僕がそう聞くと、彼女は
「あまりにも色んな人に囲まれるから、疲れちゃった。だから、逃げてきた!」
とニコニコしながら言った。
不思議な人だなと思った。


それから彼女とベンチに座って話した。まぁ彼女の方から一方的に話しかけてくるだけだが。それでも、この人に無視はよくないなと思い、反応くらいはした。
チャイムが鳴ったので彼女と別れ、教室に向かった。