診察の後カウンセリングルームに入ると、
カウンセラーの先生の隣に裕也がいるのが見え、
私はドアを開けたまま立ち止まってしまった。

「ぁ!驚かせてごめんね、今日は実習生さんも
一緒だけど、いつも通りで大丈夫だからね」

(またあとでって、こういう事だったんだ)

私は恐る恐る椅子に座り、またじーっと裕也を
見つめて思った。

(私の声が、聞こえるのかな…)

すると裕也は、

「七海ちゃんの声が、聞きたいな」

真っ直ぐ私を見てそう言うと先生は焦っていた。

「八嶋さん、七海ちゃんは失声症なの分かってるでしょ!急にそんな事言ったりしちゃ、」

「……ぁ゛……ぃ…ぅぁ………ゅ、…ぅ…ぁ゛…」

(私の声を、聞いてほしい…)

そう思いながら私は必死に口と喉を動かし、
一瞬だけど微かに声が出て、焦っていた先生は
口を開けて驚いていた。

けれど裕也は何故か得意気に微笑み、

「そう。僕の名前は、やしまゆうやだよ。」

私の言葉を聞き取ってくれていた。

その瞬間私は裕也に本物の笑顔を見せた。