主治医は優しさが顔から滲み出ているような、
たぶん施設長と同じ年くらいの女医さん。

私が何も言わなくても、ずっと泣いていても、
静かに見守ってくれる先生だった。

「こんにちは、七海ちゃん。あら、今日はどうして泣いてるのかしら?」

しばらく下を向いていた私は涙が止まると、
メモを取り出し書いてみた。

【友達がチョコをくれたの】

「そう、もしかして蓮くんかな?」

私は頷いてメモを続けた。

【お母さんがチョコをくれてたって。
私、お母さんに会いたい】

書きながら涙ぐむ私に、そっとティッシュの箱を置いてくれる先生は、

「そうね、会いたいよね。」

と言って、またしばらく私の事を見守っていた。