「ねぇ、きぃても…いぃ?」

「どんな事?」

「ゅぅゃ、くんの…ぉかあさん、の…こと」

「……いいよ」

「もし、かして…ぉいしゃさん、だった?」

「ぇ!?……ぅん、そうだけどどうして…」

「ゅぅゃ、くんの…こぇが、きこぇる……ぅそ…」

「…どっかのカウンセラーみたいだな」

「ヘヘ……まぇの、主治医のせんせぃが、ぉかあさんと…ぉともだち、だったって」

「だからか。知りたい?」

「……」

知りたいとは言えないけど、聞きたい。

「フフ………熊谷先生の奥さんと俺の母親は大学の
同期で同じ精神科医だったんだ。父親も医者だったんだけど、ある日突然いなくなって……後で分かったけど、看護師と不倫して逃げたんだよ。母親は精神科医のくせに鬱になって、自殺して…
最初に見つけたのは……俺だったんだ………」

裕也が、泣いている。

思い出して、悲しくて、憎くて、
けれど乗り越えたくて……

今度は私がハグしてあげる。
大好きな人が、辛そうだから。

「大丈夫だよ、裕也くん」

その時スーっと声が出て、裕也を抱きしめる腕に少しだけ力が入った。